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アーユルヴェーダとアロマテラピー



「私は、よく『伝統医学とアロマテラピー』と題した講演をさせていただくことがあります。そこでいつもお伝えしていることは、伝統医学とアロマテラピーが融合することで、もっとすばらしいシステムができあがるということです。『アロマテラピー』は1928年代にガットフォセがラベンダーの火傷に対する効果を発見したことから、精油がもつ薬効を利用した治療に対して用いられるようになりました。しかし、実は、精油とか香りを治療に使うことは、古来からなされていました。お香のもつ鎮静効果を利用した種々の宗教儀式は、どこの伝統にもありますし、ハーブの香り成分をオリーブ油に溶かしてマッサージすることは、ギリシャ時代からなされていました。ヒポクラテス自身も、医者たるものマッサージ(特にオイルマッサージ)をするべきだといっています。またギリシャ医学より古いといわれているインドのアーユルヴェーダでも、ハーブの成分をゴマ油やココナッツ油などの植物性油とか、精製バターなどの動物性油に溶かして利用することを治療の主要な方法としていました。ですから、アロマテラピーのルーツは実は古くからある伝統医学なのです。


最近のアロマテラピーは、基本的には現代医学的な薬理学と生薬学にもとづいて用いられる傾向があります。たしかに、占星術的な用い方や伝統医学的な作用に従って用いられることもないわけではありませんが、イギリスで盛んなアロマテラピーでは、現代医学的知識を重視していますし、フランスにいたっては、まさに現代医学的な経口薬と同じように、精油の内服を処方しています。そのため、きわめて唯物的な作用の捉え方にかたよる傾向や、ホリスティックな生命観を無視して用いられる傾向があります。特に日本におけるメディカルアロマテラピーでの利用方法などは、現代薬が精油に代わっただけという感がないでもありません。


しかし前述のごとく、伝統医学にもとづくアロマテラピーは、伝統医学のホリスティックな生命観にもとづいたものです。また、伝統医学とは、伝承医学とは異なり、極めて理論的合理的で、個体差や皮膚の場所(つぼ)の差を重視した体系です。つまり、個々人の体質や体調、季節、時間、年齢を考慮しながら、その人にあった治療を適切な場所に加え、病気でなく病人をいやすシステムなのです。現代医学的なメディカル・アロマテラピーでは、往々にして、病気にのみに目がいく傾向があり、人間が忘れられがちですが、本来のアロマテラピーは、前述のような伝統医学を生かしたアロマテラピーとなるべきでしょう。


このような、伝統医学を生かしたアロマテラピーの特徴として、私はよく以下の4点をご紹介しています。

①Rational 香りの作用のしかたを独自の生命観に基づいて論理的に説明している。

②Holistic 香りがBody・Mind・Spiritに作用することを重視している。

③Personal 香りの作用の個体差を認識している。

④Relationship 香りが関係性に作用することを認識している。


つまり、伝統医学にもとづくアロマテラピーでは、体の一部分だけではなく、全身の相関を考えるのです。ですから、体のみでなく、心や心の奥(意識)も対象にします。また、施術者と被施術者との関係性も重視し、受けるばかりでなく、与えることも考慮します。また、嗅覚や触覚のみでなく、五感全部をつかって心身を癒します。また、精油や薬だけで治すのでなく、食事や日常生活全般を正すことも指導します。そのようにして病気の治療だけではなく、健康の増進も目指すのです。さらに現代的な用語を使えば、左脳から得た外からの知識だけでなく、右脳から覚知する内側の知恵を覚醒させるのです。」


監訳者 富山県国際伝統医学センター

医師・医学博士 上馬場 和夫



『アーユルヴェーダとアロマテラピー 古代の英知と現代医学を統合したヒーリング・テクニック』

ライト・ミラー&ブライアン・ミラー 共著

上馬場 和夫 監訳

名雪いずみ/日高陵好/西川眞知子 訳


 -Ayurveda salon-

  Arunachala アルナチャラ

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