アーユルヴェーダにおける『睡眠』
『幸福・不幸・滋養・痩身・体力増大・体力減少は睡眠の支配下にあり、精力増大・精力減退・有知・無知・生存・死も睡眠によってコントロールされている』-アシュタンガ・フリダヤ
精神はある時間まではきちんと機能しますが、次第に感覚機能が疲労をきたします。
すると感覚器官の対象となるもの(音や皮膚感覚、色、におい)から次第に遠ざかり眠気が発するのです。「質のよい睡眠は人間に長寿と延命をもたらす」と言われています。十分な睡眠をとっていないと寿命が短くなるだけではなく、体力が落ちて精神が落ちつかず、精力も減退してきます。夜、気持ちよく眠れた人は、体の中の生命エネルギーのバランスがとれ、上手にその働きが行われます。睡眠には滋養強壮効果があり、顔色もよく、やる気に満ちて消化力もついてきます。
睡眠は毎日の健康のためだけではなく、長い目で見れば長生きと若返りにまで関係しますが、では、睡眠を多くとればもっと健康になるのかというとそうではありません。
寝すぎることは経路(スロータス)の閉塞を起こし、体内にめぐる栄養液や老廃物の輸送が円滑に行われなくなって、さまざまな病気に結びつくといわれます。また、精神面では、無知、無学をもたらし、暗質(タマス・ネガティブな気持ち)を心に増やすので、気難しくなったり、自己中心的になったりします。アーユルヴェーダで健康な大人に対して昼寝をすすめていないのも、これらの理由からです。
長寿のための、健康な大人の睡眠時間は、1日7時間が目安といわれています。
また、長期的に十分な睡眠をとらなかった場合は、自律神経に悪影響を与えてさまざまな病気に陥らせると現代医学でも言われています。さらに、動脈硬化がすすむので、高血圧の人は夜更かしをしてはいけないともいわれています。
夜遅くまで起きていることは、血や筋肉や骨などを支えている組織7つの構成要素(1.血漿・リンパ 2.血液 3.筋肉 4.脂肪組織 5.骨 6.骨髄 7.生殖組織)を減退させ、乾かして、もろくします。顔色が悪く、生気がなく、肌につやがなく、体力が落ち、目の輝きが失われ目の下には、くまができます。
生まれたときは充満している生命エネルギーを、できるだけ乾かさないようにするために、若いうちから夜更かしは避けるようにしましょう。仕事や勉強など、起きていることに正当な理由、いい目的、充実感、精神的な満足、生きがいなどがあれば、それは精神的によい影響を与えるので、夜更かしの悪い影響を軽減してくれます。ただし、1週間のなかで、夜11時に寝ることもあれば、夜中の2時に寝ることもあるというようなリズムのない不規則な夜更かしはいけません。
健康な人で、特に夜更かしをする必要のない人ならば、夜遅くまで起きていることは「自ら好んで老化を早める」ことになります。夜更かしはVATAを増悪させるからです。できることなら、「睡眠のためのゴールデンタイム」といわれる22時までに就寝できるような環境を整えていきましょう。
<睡眠を邪魔するもの>
・痛み
・身体的病
・メンタルストレスの蓄積
・環境の悪さ
・生命に害を及ぼす公害
・プラスイオンの悪影響(PC・OA機器など。大都市はプラスイオンが充満している)→破壊的・攻撃的・ 怠惰・ 焦り・暴力的
<安眠を得られない場合>
・ベッドの位置を変えてみる
・ベッドの素材として、スチールなどの金属製のものは体の磁場に関係してくるため木製のものがよい
・カバーやシーツなども自然素材に変えてみる
・体自身は暗闇に反応し、必要としているため暗闇で眠ることが大切
・心地よい音楽を聴く(本当によい音楽というものは、耳で聴くだけでなく体に心地よい振動を与えるため聴覚だけでなく触覚を使って全身で感じる)
・寝室の環境としては、グリーン、ライトグリーン、ブルーなど鎮静効果のある色味を使うのがふさわしい
<夢について>
夢を見ている時の脳波はα波の状態なので、夢を見ることは非常によいことであり、安眠・快眠には非常に重要です。
アルコールを過度に摂取したり、睡眠薬を用いて入眠する場合、この「夢を見ること」を飛ばして「寝て起きて」とダイレクトになるため人体的によいことではないといわれます。
夢は決して、睡眠を邪魔するものではありません。夢は時間と空間を超越するので、15~30分夢を見ているようでも、実はほんの2~3分の出来事でありどんなに長くても最大で1時間程度と言われています。
睡眠薬などの化学薬品を使用することによって「潜在意識のなかにある、まだあける準備のできていないマインドが無理によびおこされてしまう」ことが度々起こり、その結果、精神に深く傷をつけてしまったり、トラウマを引き起こしてしまうこともあります。
アーユルヴェーダでは、就寝前の準備を整えて、体が自然なかたちでそれに反応し、質のよい睡眠をとることをすすめているのも、睡眠とは、ただ、肉体の休息のためだけにあるものではなく「精神に強く影響を与えるものである」という考えに基づいているからです。
昼寝をしてもよい人…子供、老人、療養中の人、ひどく疲れている人、VATAが乱れている人