アーユルヴェーダの歴史
『伝説によると、人間の世界に「苦しみ」や「病」というものが現れた時、ヒマラヤの麓に52人の「リシ」と呼ばれる聖者が集まって会議を開き、病の苦しみから人間を救うために授けることになった「医学」、つまり神から授かった教えが「アーユルヴェーダ」であるといいます。真理を追究する聖者の瞑想の中で発展してきたもので、師から弟子へ伝承され、多くの詩文が残されています。
ブッダが活躍した紀元前6世紀頃、彼の治療を担当した医師ジーワカは、最も偉大なアーユルヴェーダ医師として今でも敬意を表されています。アーユルヴェーダの古典「チャラカ・サンヒター」や「スシュルタ・サンヒター」のチャラカ、スシュルタとは実在の医師で、彼らの功績によってその歴史が伝えられ、この2つの古典に治療法、予防法、生活法、哲学が記されています。
古代インドには、紀元前1500年〜紀元前800年に成立したしたというリグ・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダの4つの聖典があり、アーユルヴェーダは病気の治療に関するアタルヴァ・ヴェーダの一部にあたります。
当時勃興したサーンキヤ哲学等の影響を受け、理論は科学から哲学までに及び、肉体的、精神的、そしてスピリチュアル(魂)な面から、健康のために必要な要素について、ホリスティックな視点で詳細に述べられています。
「医学の父」ヒポクラテスが古代ギリシャで活躍したのが紀元前5世紀頃のことですから、その1000年以上前に古代インドには既に体系化された医学があったことになります。アーユルヴェーダは中医学をはじめユナニ医学、チベット医学等、世界中の伝統医療に影響を与えたといわれ、特に中医学との共通点は多く、ツボ、脈診、薬草、5元論などに類似点が見られます。
「時代や地域が変わっても、ヴェーダ(真理)は変わらない。ヴェーダは人間の理性や経験をはるかに超えて成立したものだから」と、アーユルヴェーダでは説いています。』
出典:『癒しのアーユルヴェーダ』佐々木薫 著