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緑の薬と白い薬

「ヒトの医療の歴史を簡単に振り返ってみましょう。はるか昔はメディカルハーブや手当て(原始的な手技療法)、それに祈りなどか行われ、途中から医薬品、手術、放射線の3つを武器にした西洋・近代医学が登場します。これ以外の療法は「代替療法」、あるいは「相補医療」と呼ばれます。


近年になって、欧米を中心に西洋・近代医学と代替療法のいずれをも視野に入れ、患者中心の医療を実現していこうという「統合医療」の考え方や取り組みがスタートしました。

「統合」とは「総合」と違い、一度バラバラにして新しいものを創造するということですが、病気に対する考え方やアプローチが異なる西洋・近代医学と代替療法の2つを統合するにはしばらく時間が必要なようです。それまではそれぞれの療法の長所や短所をよく見極め、必要に応じて賢く使い分け、ときには併用するといった状態が続くでしょう。


代替療法と西洋・近代医学の比較


代替療法

生命観: 生気論(※)

治療の目的: バランスの回復

自然観: 従うもの

得意領域: 機能の不調

不得意領域: 器質的疾患(※)


西洋・近代医学

生命観: 機械論(※)

治療の目的: 故障の修理

自然観: コントロールするもの

得意領域: 緊急事態、外傷

不得意領域: 慢性疾患、心身相関疾患(※)



(※)生気論‥生命現象には、物理や化学の法則では説明できない独特の生命原理があるとする説。伝統医学では、この生命原理を気やプラーナなどと呼んで重視した。人間を部品の集まりの機械としては説明できないとする考え方。(対義語は機械論。)


(※)器質的疾患‥臓器や筋肉などの組織が明らかに損傷したり、解剖学的、病理的な異常が生じたりすることによって発症する疾患。骨折や腸閉塞などで、レントゲン検査や内視鏡検査などにより病態が確認できる疾患を指す。(対義語は機能的疾患。身体の組織などにおいて、解剖学的、病理的な異常が発見できないにもかかわらず、臓器や器官などの機能の不調により発症する疾患。胃潰瘍や過敏性腸症候群など、心身症の多くがこれに該当する。)


(※)機械論‥生命現象を物理現象として理解し、説明できるとする説。人間を部品の集まりの機械と捉え、病気は機械の故障とする考え方。18世紀頃から主流になったもので、現代の生物学や医学は機械論を土台に構築されている。(対義語は生気論。)


(※)心身相関疾患‥心身症の定義。身体疾患のなかで、その発症や経過に心理、社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態。ただし、神経症やうつ病など、他の精神疾患に伴う身体症状は除外する。



統合医療の時代においては、西洋・近代医学と代替療法、つまり「白い薬(医薬品)」と「緑の薬(メディカルハーブ)」を状況に応じて賢く使い分けることが大切です。白い薬は単一成分で構成されているために切れ味が鋭い半面、副作用などに注意が必要です。一方、緑の薬は多様な成分が互いに相乗効果を発揮し、また行き過ぎた作用を抑えるため、侵襲性(生体に与えるダメージ)が低いことが特徴です。


緑の薬と白い薬の比較


緑の薬

含有成分: 多成分

作用の強さ: マイルド

作用の範囲: 全身

有害作用の可能性: 低い

適応領域: 一次〜三次予防(※)


白い薬

含有成分: 単一成分

作用の強さ: 強力

作用の範囲: 局所

有害作用の可能性: 高い

適応領域: 治療



(※) 一次予防‥健康増進、疾病予防

二次予防‥早期発見、早期治療

三次予防‥疾病の進行および再発の防止、合併症予防、リハビリなど予防医学の3つのステージ」




特定非営利活動法人

日本メディカルハーブ協会

ハーバルセラピスト・テキストより抜粋

 -Ayurveda salon-

  Arunachala アルナチャラ

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